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酒粕に価値を。
焼き鳥に山椒ハイボールを。 酒粕からリボーンしたスピリッツの話
2026.03.21

酒粕に価値を。 焼き鳥に山椒ハイボールを。

酒粕に価値を。
焼き鳥に山椒ハイボールを。 酒粕からリボーンしたスピリッツの話
2026.03.21

「花風」をはじめとするクラフトサケの他にもう一つ、さとタボラチームが魅了されてしまった蒸留酒があります。
「ハイボールに唐揚げを”ハイカラ”とうたってサントリーが大ヒットしたように、焼き鳥には山椒ハイボール、というのを流行らせたいと思っているんです」。

(2022年から稲とアガベに加わり、早苗饗(さなぶり)蒸留所を立ち上げ、拠点全体をマネジメントしてきた齋藤翔太さん)

稲とアガベの齋藤さんに勧められ、飲んでみたのは「山椒スピリッツ」のソーダ割。目の覚めるようなフルーティーな山椒の香りが炭酸と共に喉の奥で弾け、焼き鳥との相性が抜群であることはおろか、あらゆる料理に合うこと間違いなし。この山椒スピリッツは、酒粕から抽出したアルコールを原酒にして造られています。酒粕とは”日本酒の搾りかす”で、栄養や旨みがたっぷり含まれているというイメージこそ定着していますが、日常的に食卓に上るほど馴染みの深いものではないかもしれません。しかし江戸時代の日本では非常に貴重な栄養源として売買されていました。一説によると、酒粕の販売収入だけで蔵人の給料が賄えていたとも。

食品として食されるほか、明治期に自家醸造が原則禁止されるまでは、「粕取り焼酎」の原料として蒸留されていました。
「僕たちが大切にしている言葉に、”さなぶり”という言葉があります」。さなぶり(早苗饗)とは、田植えの後に豊作を祈願する神事のこと。そこで粕取り焼酎が「早苗饗焼酎」として振る舞われ、更に残った酒粕は畑に撒いて肥料にされていたという記録が残っています。「昔は勿体無い思想から当たり前のようにものづくりが循環していたんです。稲とアガベでは、古来日本に自然と根付いていた思想を原点に、循環型ものづくりによる未来を「SANABURI構想」として描き、酒粕に価値を与える取り組みをしています」。

飽食の現代、酒粕は酒造によっては悩みの種になっています。日本全国で生成される酒粕は、年間で3万トン以上と推計され、齋藤さんによると、そのうち再活用されているのは7〜8割程度ではないかとのこと。それもトレーサビリティが取れた大手酒造のものが大半。秋田県だけでも、年間400トンの酒粕が廃棄されているというのが現実です。「伝統的な酒蔵と共に日本酒業界を盛り上げていくために、ベンチャー企業として何ができるかを考えた時にも、酒粕に価値を与えるということに行き着いたんです」。

このような背景から誕生した稲とアガベの「SANABURI SPIRITS」と「SANABURI GIN」シリーズ。その蒸留所にお邪魔すると、ブロンズと銀の2台の機械が。「この2台が隣に並んでいるのは、今のところおそらく日本でうちだけだと思います」。ブロンズの銅製蒸留機の横にある銀色の機械は、酒粕からアルコールを飛ばして粕取り焼酎をつくる「酒粕蒸留乾燥装置」というもの。下の方に上下に連なる平べったい扇形の受け皿のような部分に酒粕を入れ、3~4時間ゆっくり回転させながら、減圧して40~50度で蒸発させると、200kgほどの酒粕からアルコール度数40~50度の粕取り焼酎が30ℓ前後とれるのだそうです。酒造が手放した中古を導入し、自社で酒粕からベーススピリッツを造り、それに、山椒が柑橘系植物であることを思い出させてくれるような爽やかな香りが特徴の和歌山産山椒を掛け合わせた、SANABURIシリーズ最初の実験酒。それが「山椒スピリッツ」なのです。

山椒の他にも、ピューレにした後の八朔の皮、製塩の過程で出るニガリ、あるいはの「花風」の醸造過程で使い終わったホップなど、「廃棄されるリスクのある」様々な素材と合わせて展開されるジンやリキュールも。更に、蒸留した後の酒粕は、代替マヨネーズ「発酵マヨ」をはじめとする様々な調味料やケーキの原料などに再活用されています。そして更に残った酒粕は肥料に。そこからまたお米が作られています。勿体無い思想が貫徹され、酒粕が何度も生まれ変わって生み出される”SANABURI”の数々。男鹿駅から徒歩2分の街角にひっそりと佇む食品加工場「SANABURI FACTORY」にはショップが併設されており、加工場内で製造した食品や店舗限定酒、更に秋田のつくり手のものを中心としたセンスの光る雑貨や器が並びます。古来日本に息づいていた伝統と循環がアップデートされ、北の大地を舞台に根付きつつあるいとなみに思いを馳せながら、ぜひ訪れてみてください。都内やネットでは在庫切れで購入できないお酒も並んでいます。

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